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​農薬は本当に悪か?

花好園では栽培過程で農薬を使用しています。昨今では「環境に配慮した農業をすべきだ」、「農薬は体に悪い、無農薬や有機栽培の方が健康的」という風潮が一部であります。それなのになぜ農薬を使用するのか?私自身大学院を含め6年間農学を専攻していたので、専門的な知識を交えながら論理的に説明していきます。

<理由① 秀品率を上げる>

切花は他の農作物と異なり、見た目が全てと言っても過言ではないほど外観が重視されます。また種類にもよりますが、無農薬栽培は農薬を使用する場合よりも病害虫の防除のハードルが上がります。これが家庭菜園等の小規模栽培だったらさほど問題にはなりませんが、私たちのように切花を生活の生業にする身からすると農業経営の分かれ道になります。簡単に説明すると以下の2パターンになります。

・農薬を使用し正確に病害虫を防除、秀品率を上げる

・無農薬/有機栽培を付加価値として生産コストの増加分を価格に上乗せする

これはどちらが良い・悪いという話ではなく、農業経営をする上で何に軸を置くかの違いだと思っています。うまい例えかわかりませんが、子供が産まれた時に右利きとして育てるか左利きとして育てるか、に似てるかもしれません。

日本人は右利きが多いので社会インフラも右利き用にデザインされているものが多い一方、スポーツの世界では左利きの方が有利な場面を頻繁に見かけます。

<理由② 正しい利用法なら安全性は担保される>

農薬は農薬取締法に基づき、販売前に国に登録する必要があります。登録する際には以下の4つの安全性評価が義務化されています。

  1. 農薬の使用者に対する安全性

    農薬使用者の農薬使用時における健康影響の可能性

  2. 農作物に対する安全性

    作物の生長や収穫物の収量・品質に対する影響の可能性

  3. 消費者に対する安全性

    残留農薬による長期的暴露あるいは短期的曝露による、人の健康に対する影響の可能性

  4. 環境に対する安全性

    土壌、水、大気等環境への影響や、環境中の動植物への影響、又は環境中での水を通しての人への影響の可能性や分解性等

​参考: JCPA農薬工業会

その上で農薬の「使用基準」が定められます。使用基準とは農作物の残留や人への影響が国の定める基準値以下となるよう使用量・頻度・他の農薬との組み合わせが定められたものです。

そのため、農薬は使用基準​に沿って正しく利用すれば、世間で騒がれている健康被害や環境汚染への影響等の問題には繋がりません。農薬に限った話ではなく、物には限度というものがあります。例えば水、一見安全そうに見えますが一気に7.5L飲んだ女性が死亡したというケースがもあります。

​適切な量を適切な頻度だけ、これが農薬利用の際の鉄則です。

各農薬のパッケージの裏には使用基準が記載されています。​農業者は基準を満たすように農薬の量・頻度を調整します。

農薬の例

​主な病害虫防除とその方法

ユリ栽培において、主に発蕾期(蕾が発生し大きくなる生育ステージ)におけるアブラムシの被害が問題となります。そこで化学農薬の散布を各圃場にて10~14日の頻度にて行っています。

その際に注意しているのが複数の薬剤をローテーションして使用しているということです。

一般的に同じ農薬を繰り返し使用すると、害虫や病原菌・雑草に抵抗性​を持つようになります。理由は、農薬は生物の特定の作用点(例えば呼吸系)にヒットするように作られており、大半はそれが効くのですが中にはうまく効かない細菌・病害虫・植物が出てきます。そういったものが残り次第に繁殖するようになると同じ農薬では効かなくなります。

ローテーション散布の重要性についてはこちらでも解説されておりますので参考まで。

​https://www.sc-engei.co.jp/myroses/dispersal/1

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