【農業資材】切花の前処理剤の作用機構
- kakoenaichi
- 2024年1月9日
- 読了時間: 2分
更新日:2024年1月10日
突然ですが、切花には鮮度保持のための品質保持剤と呼ばれる資材が存在します。俗にいう栄養剤です。
その品質保持剤には、収穫後に使用する前処理剤(主に生産者向け)と小売店や消費者が用いる後処理剤後に分類されます。
さらに細かく分類すると市場から小売店までの流通で用いられるものを中処理剤、消費者が用いる後処理剤になりますが配合成分は類似している場合が多いので、ここでは便宜上同じ括りとさせて頂きます。
さて、それぞれの主成分は抗菌剤、糖類が含まれていますが、特に前処理剤にはSTS(チオ亜硫酸銀)と呼ばれる物質が含まれています。
抗菌剤→腐らないようにする、糖類→植物の栄養分、といったように名前から想像できる場合は役割が分かりますが、STSって何?と思いませんか?
そもそも品質保持剤をなぜ使用するか、という原点に立ち返りたいと思います。切花は鮮度が命、収穫した時(正確には茎を刃物で切断した瞬間)から老化が進行します。
その老化を促進させているのが、エチレンと呼ばれる植物ホルモンです。このホルモンが植物体内で発生すると、花が萎れたり葉が枯れたりと老化が進行していきます。
そこで、なんとかエチレンの作用を止めてやりたい!と思うわけです。ここからSTSの出番です。
こちらの図をご覧ください。
論文から引っ張ってきた図なので英語のままなのはご了承ください。
点線の左側がエチレンがない状態、右側がある状態(赤丸です)を示しています。ざっくり説明すると、植物ホルモンであるエチレンはETR1と呼ばれる受容体(タンパク質の一種です)に結合すると、それ以降の反応が進んで老化を引き起こすメカニズムを持っています。
そしてそのエチレンと構造が似ているのがSTSであり、STSがエチレンの代わりにETR1と結合してしまいます。エチレンの邪魔をしてくれる、という表現がわかりやすいかもしれません。その結果、以降の反応が進まず老化が抑制されるという仕組みになっています。
今回は分子メカニズムの細かい説明になってしまったので難しい内容になってしまいましたが、切花の前処理剤はこのような仕組みで老化を防いでいるんだよ!ということがなんとなくわかっていただければ幸いです。
それでは、また〜!
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